
腎臓は体内の老廃物や余分な水分、ミネラルを尿として排泄する重要な臓器です。
腎機能が低下する慢性腎臓病(CKD)では、様々なミネラルのバランスが崩れやすくなりますが、特に注意が必要なのが「リン」です。
この記事では、腎臓病とリンの深い関係性、そしてリンをコントロールするための食事療法のポイントについて、詳しく解説します。
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健康な腎臓は、食事から摂取されたリンのうち、体内で不要になった分を尿中に排泄し、血液中のリン濃度を適切な範囲(正常値:2.5~4.5mg/dL程度)に保っています。
しかし、腎機能が低下すると、リンを十分に排泄できなくなり、血液中にリンが過剰に溜まった状態、すなわち高リン血症を引き起こしやすくなります。
高リン血症は、自覚症状がないまま進行することが多いですが、放置すると以下のような深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
このように、リンの管理は、CKDの進行を抑制し、合併症を防ぎ、より良い生活を送る上で非常に重要です。
リンの管理目標は、CKDの進行度(ステージ)によって異なります。
日本腎臓学会のガイドラインでは、血清リン濃度と食事からのリン摂取量について、以下の目標値が推奨されています。
CKDステージに応じた血清リン濃度と食事リン摂取量の目標
| CKDステージ | 血清Cr値 または eGFR (mL/分/1.73m²) | 血清リン濃度目標 (mg/dL) | 食事リン摂取目標量 (mg/日) |
|---|---|---|---|
| G3a | eGFR 45~59 | 正常範囲 (2.5~4.5) | (タンパク質摂取量(g/日) × 15)mg/日 以下 |
| G3b | eGFR 30~44 | 正常範囲 (2.5~4.5) | (タンパク質摂取量(g/日) × 15)mg/日 以下 |
| G4 | eGFR 15~29 | 正常範囲 (2.5~4.5) | (タンパク質摂取量(g/日) × 15)mg/日 以下 |
| G5 | eGFR <15 (透析未導入) | 正常範囲 (2.5~4.5) | (タンパク質摂取量(g/日) × 15)mg/日 以下 |
| G5D | 透析導入後 | 3.5~6.0 | (タンパク質摂取量(g/日) × 15)mg/日 を目安とする |
高リン血症を防ぐためには、食事からのリン摂取量をコントロールすることが基本となります。
食品に含まれるリンには、大きく分けて「有機リン」と「無機リン」の2種類があります。
ポイント:無機リン(食品添加物)の摂取を極力避けることが重要です。
リンは多くの食品に含まれていますが、特に注意が必要なのは以下の食品群です。
加工食品を購入する際は、原材料表示を確認し、「リン酸塩」や「pH調整剤」などの表示があるものは、無機リンが含まれている可能性が高いと考え、摂取を控えるようにしましょう。
栄養成分表示にリンの含有量が記載されていることは稀ですが、原材料表示の確認はリン管理の第一歩です。
タンパク質は体に必要な栄養素ですが、CKDでは過剰摂取を避ける必要があり、同時にリンの摂取も抑えなければなりません。そこで役立つのが「リン/タンパク質比」(食品中のリン含有量(mg) ÷ タンパク質含有量(g))という考え方です。
同じタンパク質量でも、この比率が低い食品を選ぶことで、効率的にリンの摂取を抑えることができます。
主な食品のリン含有量とリン/タンパク質比の目安
| 食品分類 | 食品名 | 100gあたり リン(mg) | 100gあたり タンパク質(g) | リン/タンパク質比 (mg/g) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 肉類 | 豚レバー | 360 | 20.4 | 17.6 | 高リン・高タンパク |
| 鶏むね肉 (皮なし) | 220 | 23.3 | 9.4 | 比較的低リン/タンパク質比 | |
| ウインナーソーセージ | 197 | 11.5 | 17.1 | 加工によりリン添加の可能性、比率も高い | |
| 魚介類 | しらす干し(半乾燥) | 860 | 40.5 | 21.2 | 高リン・高タンパク |
| まいわし (丸干し) | 660 | 32.8 | 20.1 | 高リン・高タンパク | |
| まだら (生) | 240 | 17.6 | 13.6 | 白身魚は比較的リンが少ない傾向 | |
| はんぺん | 120 | 9.9 | 12.1 | 練り製品はリン添加の可能性あり | |
| 卵類 | 鶏卵 (全卵) | 170 | 12.2 | 13.9 | 卵黄にリンが多い |
| 乳製品 | プロセスチーズ | 730 | 22.7 | 32.2 | 非常に高いリン/タンパク質比、要注意 |
| 牛乳 (普通) | 93 | 3.3 | 28.2 | リン/タンパク質比が高い | |
| 大豆製品 | 納豆 | 190 | 16.5 | 11.5 | 比較的バランスが良い |
| 加工食品 | カップ麺 (例) | 変動大 | 変動大 | 非常に高い場合あり | 添加物として無機リンが多く含まれることが多い |
| コーラ (例) | 約15mg/100ml | 0 | - | 添加物由来のリン |
この表からわかること
食材に含まれるリンは、調理法によって減らすことが可能です。
調理によるリン除去率の目安
| 調理法 | リン除去率 (%) |
|---|---|
| 茹でる | 20~50% |
| 水さらし | 10~30% |
| 電子レンジ調理 | 除去効果は低い |
ポイント
野菜や肉、魚などを調理する際は、茹でこぼしを活用するとリンの摂取量を抑えられます。ただし、カリウム制限も必要な場合は、茹でこぼしによりカリウムも除去される点を考慮する必要があります。
食事療法を最大限に行っても、血清リン濃度が目標値まで下がらない場合には、「リン吸着薬」が処方されることがあります。
リン吸着薬は、腸管内で食物中のリンと結合し、体内に吸収されるのを防ぐ薬です。
腎臓病(CKD)において、リンの管理は生命予後にも関わる非常に重要な課題です。高リン血症は自覚症状がないまま進行し、骨や血管に深刻なダメージを与える可能性があります。
リンの管理は、まず食事療法が基本となります。
これらのポイントを実践することが大切です。
しかし、リンの制限はタンパク質や他のミネラル(カルシウム、カリウムなど)の摂取量とも密接に関連しており、自己流の判断で行うのは危険です。必ず医師や管理栄養士の指導のもと、ご自身の病状やライフスタイルに合った適切な方法で進めるようにしましょう。
食事療法だけでコントロールが難しい場合には、リン吸着薬が処方されることもあります。医師の指示に従い、正しく服用することが重要です。
リンの管理は、腎臓病と長く付き合っていく上で欠かせない取り組みです。正しい知識を身につけ、専門家と相談しながら、根気強く続けていきましょう。