- (更新日:2025年08月22日)

慢性腎臓病とは?|腎臓病の種類と特徴 主な分類と最新治療法
1. 腎臓病とは - 腎臓の働きと重要性
腎臓病とは、さまざまな原因によって腎臓の働きが低下する疾患群の総称です。人間の体には左右に一対の腎臓があり、それぞれが数百万個のネフロンと呼ばれる機能単位から構成されています。腎臓病を理解するには、まずその基本的な機能を知ることが大切です。
1-1. 腎臓の基本的な機能
腎臓には主に以下の重要な機能があります:
老廃物の排泄: 体内で生じた不要な物質や有害物質を尿として体外に排出します
体液量の調節: 体内の水分量を適切に保ち、血圧の維持に貢献します
電解質バランスの維持: ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質濃度を調整します
ホルモン分泌: 赤血球の産生を促すエリスロポエチンや、骨の形成に関わるビタミンD活性化などを行います
酸塩基平衡の調整: 体内のpHバランスを適正範囲に保ちます
これらの機能が障害されると、全身にさまざまな症状が現れるようになります。
1-2. 腎臓病が体に与える影響
腎臓病が進行すると、次のような影響が体に現れます:
むくみ(浮腫): 体液の貯留により、特に足首や顔にむくみが生じます
高血圧: 体液量の増加や腎臓からの昇圧物質の分泌により血圧が上昇します
貧血: エリスロポエチンの産生低下により、赤血球の生成が減少します
骨代謝異常: カルシウムやリンの代謝異常により、骨が脆くなることがあります
心血管疾患のリスク上昇: 腎臓病があると心臓病や脳卒中のリスクが高まります
倦怠感や食欲不振: 老廃物が体内に蓄積することで、全身の不調が生じます
1-3. 腎臓病の早期発見の重要性
腎臓病は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、初期段階ではほとんど症状が現れないことが特徴です。腎機能が70%以上残っている段階では、自覚症状がほとんどないため、定期的な健康診断での尿検査や血液検査が重要になります。
早期発見のポイント:
尿検査での蛋白尿や血尿のチェック
血液検査でのクレアチニン値やeGFR(推算糸球体ろ過量)の確認
高血圧や糖尿病など、腎臓病のリスク因子がある人の定期検診
早期に発見できれば、生活習慣の改善や適切な治療により、腎機能の低下を抑えたり、場合によっては改善させたりすることも可能です。
2. 腎臓病の基本分類
腎臓病は、発症の原因や経過などによって様々な方法で分類されます。基本的な分類方法を理解することで、腎臓病の全体像をより明確に把握することができます。
2-1. 原発性腎臓病と続発性腎臓病の違い
腎臓病は原因によって大きく2つに分けられます:
この分類は治療方針を決める上で重要であり、続発性の場合は原因となる疾患の治療も同時に行う必要があります。
2-2. 急性腎臓病と慢性腎臓病の経過による分類
腎臓病は発症から経過の時間や進行の速さによって、急性と慢性に分けられます:
慢性腎臓病は日本では成人の約8人に1人が罹患していると推定され、社会的にも重要な疾患とされています。
2-3. 病変部位による分類(糸球体、尿細管、間質、血管)
腎臓のどの部位に病変が生じるかによっても分類されます:
腎臓病は複数の部位に病変が及ぶことも多く、総合的な評価が重要です。
2-4. 慢性腎臓病(CKD)と急性腎障害(AKI)の患者数と有病率
項目 | 慢性腎臓病(CKD) | 急性腎障害(AKI) |
---|---|---|
推計患者数 | 約1,480万人(2023年推計) | 正確な総数は不明 |
有病率 | 成人の約7〜8人に1人 | 入院患者全体の約23.2% |
年齢層別有病率 | 65〜74歳:約11.8% 75歳以上:約33.3%(3人に1人) | 成人入院患者:21.6%(5人に1人) 小児入院患者:33.7%(3人に1人) |
診断・治療中の患者数 | 62万9,000人(2020年患者調査) | データなし |
透析患者数 | 34万7,474人(2022年末時点) | 一時的透析を要する患者は全AKI患者の約2.3% |
リスク因子 | 高血圧、糖尿病、肥満、加齢、喫煙など | 既存のCKD、加齢、蛋白尿、敗血症、心臓手術など |
発症場所 | - | 院内発症:約42% 院外発症:約58% |
重症度分布 | G1-G2(軽度):約60% G3(中等度):約35% G4-G5(重度):約5% | RIFLE-Risk(軽度):11.5% RIFLE-Injury(中等度):4.8% RIFLE-Failure(重度):4.0% 透析要:2.3% |
主な原因疾患 | 糖尿病性腎臓病(透析患者の39.5%) 慢性糸球体腎炎(約25%) 腎硬化症(約10%) | 虚血、腎毒性物質、敗血症(院内発症) 脱水、感染症(院外発症) |
年間医療費 | 糸球体疾患、腎尿細管間質性疾患及び腎不全: 1兆5,346億円(2014年度) | データなし |
引用:慢性腎臓病と急性腎障害の日本における患者数の割合について
3. 慢性腎臓病(CKD)のステージ分類
慢性腎臓病(CKD)は、その重症度によって細かく分類されます。この分類は治療方針の決定や予後予測に重要な役割を果たします。
3-1. GFRとeGFRによる腎機能評価
腎機能評価の指標として最も重要なのが、糸球体濾過量(GFR)です:
eGFRの値が低いほど、腎機能が低下していることを示します。
3-2. CKDのステージ1〜5と各ステージの特徴
CKDは腎機能(eGFR)に基づいて、以下の5つのステージに分類されます:
ステージが進むほど、合併症のリスクが高まり、より厳格な治療や管理が必要になります。
3-3. アルブミン尿による重症度分類
CKDの重症度は、eGFRだけでなくアルブミン尿(または蛋白尿)の程度も考慮して評価します:
この重症度分類を用いることで、個々の患者の状態に応じた適切な治療方針を立てることができます。
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